乳房のひきつれ
乳房の皮膚のへこみやひきつれは、乳癌でみられることがある重要な症状です。気付いた場合は早めの受診をおすすめします。不安を抱えたまま過ごすのではなく、まずは現状を把握するために当院へご相談ください。
乳房のひきつれの原因
乳房のひきつれが起こる主な原因は、乳腺の組織やその周囲にある脂肪、皮膚を支える構造に変化が生じることにあります。ここでは、臨床の現場でよく見られる主な原因について詳しく解説します。
クーパー靭帯の引き込み
乳房の形を維持するために、皮膚と乳腺をつないでいるクーパー靭帯という組織があります。乳腺の中にしこりや炎症ができると、この靭帯が内側に引っ張られることがあります。その結果、表面の皮膚が連動して凹み、ひきつれとして現れます。特に腕を上げた時など、皮膚が伸展する動作で目立ちやすくなるのが特徴です。
脂肪壊死
胸を強くぶつけたり、過去に手術を受けたりした箇所で、脂肪組織がダメージを受けて硬くなることがあります。これを脂肪壊死と呼びます。修復の過程で周囲の組織を巻き込んで硬くなるため、皮膚を内側に引き込んでしまい、ひきつれやしこりのように感じられることがあります。良性の変化ではありますが、画像検査では悪性腫瘍と区別がつきにくい場合があるため、丁寧な診察が求められます。
手術後の組織変化
以前に乳腺の良性腫瘍の切除や、乳がんの手術を受けたことがある場合、その傷跡が治る過程で組織が収縮することがあります。手術から数年経ってから、組織の硬化が進んでひきつれが目立ってくるケースも少なくありません。定期的な経過観察を行っている中で、新しい変化なのか過去の影響なのかを判断することが重要です。
乳房のひきつれによって引き起こされる病気
乳房のひきつれは、必ずしも重い病気とは限りませんが、中には早期の対応が必要な病気が隠れていることがあります。当院では、どのような可能性が考えられるかを多角的に検討します。
乳がん
乳房のひきつれにおいて、最も注意深く確認しなければならないのが乳がんです。がん細胞が周囲の組織へ浸潤(広がり)していく際、クーパー靭帯を巻き込んで縮ませる性質があります。これにより、皮膚が内側に引き込まれて、えくぼのような凹みやひきつれが生じます。しこりをはっきりと触れない場合でも、ひきつれだけが先行して現れることもあるため、非常に重要なサインとなります。
乳がんについての詳細については「乳癌(診断、術後フォロー)」のページを参照してください。
乳腺症
女性ホルモンのバランスの変化により、乳腺が硬くなったり、袋状の組織(のう胞)ができたりする状態を総称して乳腺症と呼びます。乳腺全体が硬くなることで、周囲の皮膚との関係に変化が生じ、軽いひきつれ感や違和感を感じることがあります。生理周期に合わせて症状が変動することが多いのも特徴の一つです。
乳腺症の詳細については「乳腺症」のページを参照してください。
乳腺炎
乳管に細菌が入ったり、母乳が詰まったりして炎症が起こる状態です。炎症が激しい場合、周囲の組織が腫れて皮膚が突っ張るように感じられます。慢性的な炎症が続くと、組織が線維化(硬くなること)して、炎症が治まった後にもひきつれが残る場合があります。赤みや熱感を伴うことが多いですが、一部の特殊な炎症ではしこりやひきつれが目立つこともあります。
乳腺炎の詳細については「乳腺炎」のページを参照してください。
乳房のひきつれの処置や治療法
四日市駅前よしかわ乳腺クリニックでは、患者さんの不安を少しでも早く解消できるよう、精密な検査を行い、原因に適した方針を提案します。
視診・触診
まずは医師が直接、乳房の状態を観察します。特定の動作(腕を上げる、腰に手を当てるなど)をした時に、どの程度ひきつれが現れるかを確認します。また、その部分に硬いしこりがないか、皮膚の厚みや色に変化がないかを丁寧に確かめます。
画像診断による精密検査
ひきつれの原因を突き止めるために、画像検査は欠かせません。当院では以下の検査を組み合わせて行います。
- マンモグラフィー・・乳房専用のレントゲン検査です。しこりとして触れないような微細な石灰化や、組織のゆがみ(構築乱れ)を見つけることに適しています。
- 乳腺超音波検査・・エコーを用いて、乳腺の内部構造をリアルタイムで観察します。ひきつれのある部分の直下に何があるのか、血流の状態はどうかなどを精密に調べます。
マンモグラフィについて詳しくはこちら
針生検(組織検査)
画像検査の結果、良性か悪性かの判断が難しい病変が見つかった場合には、針を使って組織の一部を採取する針生検を行うことがあります。採取した組織を顕微鏡で詳しく調べることで、より精度の高い診断が可能になります。
治療の進め方
検査の結果、原因が判明した後はそれぞれの状態に合わせた対応を行います。
- 良性の変化の場合・・特別な治療を必要とせず、自然な経過を見守ることが多いです。
- 乳がんが発見された場合・・地域の基幹病院と緊密に連携しており、速やかに適切な治療を受けられるよう手配いたします。診断後のフォローアップも当院で行うことが可能です。
乳房のひきつれについてのよくある質問
Q1. 腕を上げた時だけ凹みができるのですが、これだけで受診しても良いですか?
A1. はい、もちろんです。腕を上げた時にだけ現れるひきつれは、乳がんの初期症状である「えくぼ兆候」の可能性があります。しこりがなくても大切なサインですので、早めに専門医による画像検査を受けることをお勧めします。
Q2. ひきつれがある場所が痛くないのですが、放っておいても大丈夫ですか?
A2. 乳がんによるひきつれは、多くの場合、痛みを伴いません。むしろ、痛みがないからこそ発見が遅れてしまうこともあります。痛みの有無にかかわらず、見た目の変化に気づいた時は受診のタイミングです。
Q3. 以前に受けた検診では異常なしと言われましたが、受診は必要ですか?
A3. 前回の検診から時間が経過している場合、新しく病変が生じている可能性があります。また、検診の種類によっては見つかりにくい場所もあります。現在の症状がある以上、改めて精密な診察を受けることがご自身の安心につながります。
Q4. マンモグラフィーとエコー、どちらの検査が必要ですか?
A4. ひきつれの原因を多角的に分析するためには、両方の検査を併用することが理想的です。マンモグラフィーは組織全体のゆがみを捉えることに長け、エコーは特定の部位を詳細に観察することに適しています。当院では患者さんの年齢や乳腺の性質に合わせて、適した組み合わせを提案します。
院長より
乳房に「ひきつれ」を見つけた時、多くの方が「もしかして乳がんでは?」と強い不安を感じられることでしょう。私たち四日市駅前よしかわ乳腺クリニックは、そんな皆さんの不安に寄り添い、確かな専門知識と技術で向き合う場所でありたいと考えています。私は放射線診断専門医として、マンモグラフィーや超音波画像から得られる微細な情報を読み解き、病変を確実に見つけ出すことに心血を注いでいます。また、乳腺外科医である妻と共に、一人ひとりの患者さんに丁寧な説明とあたたかな診療を提供することを大切にしています。四日市エリアの皆様にとって、どんな些細な変化でも気軽に相談できる身近なパートナーであり続けることが私たちの使命です。ひきつれは身体が発信している大切なメッセージかもしれません。それを「安心」に変えるために、どうぞ勇気を出して当院のドアを叩いてください。地域の基幹病院ともしっかりと連携しておりますので、もしもの時もご自身に合った適切な医療へスムーズにつなげる体制を整えています。皆様のご来院を、心よりお待ちしております。
