線維腺腫
線維腺腫は若い女性に多くみられる良性の腫瘍で、弾力のあるしこりとして触れることがあります。
多くの場合は経過観察で問題ありませんが、大きくなる場合や診断が難しい場合には組織検査や手術を検討することがあります。定期的な超音波検査で変化を確認します。
線維腺腫の症状について
線維腺腫の主な症状は、乳房の中に触れるしこりです。多くの場合、痛みはなく、たまたま着替えや入浴中にご自身で気づかれることがほとんどです。このしこりには、いくつかの特徴的な感触があります。
- 指で触れると、クリクリとよく動く手応えがある
- 形がはっきりとしていて、境界がわかりやすい
- 表面が滑らかで、ゴムのような弾力がある
- 生理前に少し大きくなったり、張りを感じたりすることがある
しこりの大きさは、数ミリ程度の小さなものから、数センチに達するものまでさまざまです。一般的には1センチから2センチ程度の大きさで見つかることが多く、ある程度の大きさまで育つと、それ以上は成長が止まったり、年齢を重ねるごとに小さくなったりすることもあります。しかし、ご自身で触れるだけでは、それが良性の線維腺腫なのか、あるいは他の病気なのかを判断することはできません。
しこりの詳細については「乳房のしこり」のページも併せて参照してください。もし、以前よりも急に大きくなったと感じる場合や、形がいびつになってきたと感じる場合は、早めの受診をお勧めします。
線維腺腫の原因について
線維腺腫がなぜ発生するのか、そのはっきりとした原因はまだ完全には解明されていません。しかし、女性ホルモンであるエストロゲンの影響が深く関わっていると考えられています。その理由は、以下のような臨床上の特徴があるためです。
- ホルモン活動が活発な思春期から30代に多く発生する
- 妊娠や授乳期にホルモンバランスが変化すると、しこりが大きくなることがある
- 閉経後、女性ホルモンの分泌が減少すると、しこりが小さくなったり石灰化して硬くなったりする
乳腺を構成する「線維組織」と「腺組織」が、ホルモンの刺激を受けて過剰に増殖してしまうことが、このしこりの正体です。体質的な要素も大きいと考えられており、特定の生活習慣が原因で起こるものではありません。そのため、ご自身の生活や食事を責める必要は全くありません。私たちの乳腺外科では、こうしたホルモンバランスの変化も考慮しながら、経過を慎重に見守っていきます。
線維腺腫の診断と検査の流れ
当院では、線維腺腫が疑われる場合、まず丁寧な画像診断を行います。放射線診断専門医である院長と、乳腺専門医の女性医師が連携し、見落としのない精密な診断を目指します。
1.視診・触診
医師が直接しこりに触れ、その硬さや動きやすさ、表面の状態を確認します。線維腺腫特有の「よく動く、弾力がある」という特徴を確認する重要なステップです。
2.超音波(エコー)検査
若い女性の乳腺は密度が高いため、エコー検査が非常に有効です。しこりの内部の状態や、血流の有無を詳しく観察します。線維腺腫であれば、横に長い楕円形の黒い影として映ることが一般的です。
3.マンモグラフィ検査
しこりに石灰化が伴っていないか、周囲の組織を引き込んでいないかを確認します。年齢や乳腺の密度に応じて、必要性を判断して実施します。
マンモグラフィについて詳しくはこちら
4.組織診
画像検査だけでは、悪性腫瘍や他の疾患との区別が難しい場合があります。その際には、針を使ってしこりの組織を一部採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査を行います。特に、次に説明する「葉状腫瘍」との区別が必要な場合には欠かせない検査です。
線維腺腫の治療法について
線維腺腫と診断された場合、基本的には経過観察が治療の第一選択となります。癌ではありませんので、無理に手術で取り除く必要はありません。
- 定期的なエコー検査によるサイズ確認
- 閉経まで様子を見守る方針
- 痛みがある場合などの症状緩和
ただし、以下のようなケースでは、手術による摘出を検討することもあります。
サイズが急速に大きくなる場合
短期間でしこりが成長し、3センチを超えるような場合には、良性の線維腺腫であっても摘出を勧めることがあります。これは、巨大化することによる容姿への影響や、周囲の乳腺への圧迫を避けるためです。
葉状腫瘍との区別がつかない場合
画像検査や組織診を行っても、葉状腫瘍という別の病気である可能性が否定できない場合は、診断を確定させる目的でしこり全体を摘出することがあります。葉状腫瘍は再発しやすく、稀に悪性の性質を持つことがあるため、慎重な対応が必要です。詳細は「葉状腫瘍」のページを参照してください。
線維腺腫についてのよくある質問
Q1.線維腺腫が将来、乳がんに変わることはありますか?
A1.基本的に、線維腺腫という良性のしこりが直接乳がんに変化することはありません。ただし、しこりの近くにたまたま乳がんが発生する可能性や、最初の診断時に小さな癌が隠れている可能性はゼロではありません。そのため、定期的な検診を続けることが非常に重要です。
Q2.放置しておいても大丈夫ですか?
A2.良性の診断が確定していれば、放置して命に関わることはありません。しかし、ご自身で「これは線維腺腫だ」と決めつけるのは危険です。必ず専門医の診察を受け、画像検査で確認した上で、適切な間隔で経過を見ていくようにしてください。
Q3.しこりを小さくする薬はありますか?
A3.現在、線維腺腫を薬で溶かしたり小さくしたりする先進的な治療薬は存在しません。
Q4.妊娠中にしこりが大きくなっても心配ないですか?
A4.妊娠中はエストロゲンなどの女性ホルモンが増加するため、線維腺腫が大きくなることは珍しくありません。多くは出産・授乳後に元のサイズに戻りますが、妊娠中に新しくできるしこりの中には、稀に「妊娠期乳がん」が隠れていることもあるため、必ず一度は乳腺外来を受診してください。
院長より
胸にしこりを見つけると、誰でも「癌かもしれない」と強い恐怖を感じるものです。しかし、精密な画像検査を行うことで、その多くが線維腺腫のような良性の病気であることを確認できます。当院では、放射線診断専門医として画像から病変の性質を読み解く私と、乳腺専門医として多くの臨床経験を積んできた医師の二人が、皆さんの「安心」を全力でサポートします。近鉄四日市駅周辺にお住まいの方や、通勤通学される方も、屋根のある通いやすい道を通って気軽にお越しください。私たちは、一人ひとりの患者さんと丁寧に向き合い、専門性とあたたかさを大切にした診療をお約束します。不安を一人で抱え込まず、まずは一度、専門的な検査を受けに来てくださいね。
